建物の履歴から着想した店舗の改修。
商店街から一歩入り、住宅と商店が混在する通りに建つ築40年の木造2階建てをギャラリー利用もできる喫茶店へと改修した。築年数も経ち既存の状況を確認すると、当時の下地や小屋組み、また40年の時間の中で一時的に隣家と一体利用するために補強された鉄骨など、これまでの複数の改修の履歴が露わになった。これらの履歴は建物が培った固有の時間と捉え、改修への手がかりとした。
露わになったそれぞれの履歴を、鉄骨柱に寄りかかるカウンター、仕上げを剥がし補強した耐力壁を現した自由な展示壁、40年前の野縁からぶらさげるような吊り戸とした。2階では、天井の古びた化粧ボードの外周部を残すように中央部のみ剥がすことで小屋組みを現わし、比較的大きな作品の展示などができる空間とした。
様々な履歴を喫茶とギャラリー機能を充足させるエレメントのきっかけとし、重層的な厚みを持たすことで、多様な振る舞いを許容できる空間とすることを目指した。