夫婦の趣味がそのまま立ち上がる庭に建つ増築。
周囲に田畑が広がり、穏やかな環境のなかに敷地となる住宅が建ち、庭には夫が愛でる植物が所狭しに溢れていた。この庭に妻の趣味である焼き菓子をつくるための空間を増築することとなったが、同時に庭の植物の整理や動線の確保が重要であった。そこで焼き菓子に必要な機器や想定される使われ方から導かれた最小限である2,500mm×4,000mmの増築とし、植物のための空間を最大化した。外壁はガラスを用い、機器レイアウトに影響を与えないよう構造となるフラットバーの柱をガラスの外側に放射状に配置し、また柱間には座屈止めを兼ねた植物のための棚を設けた。棚には植物が並び、増築の日除けとなりながら、植物の成長や、葉の揺らめきなど刻々と変化を感じられる。庭に溢れる植物に包まれる空間である。妻のための空間を夫の趣味が纏ったこの小屋は、穏やかな暮らしの下支えとなり、夫婦の豊かな時間をつくりだす。